オムニチャネルは、アメリカのMacy'sが2007年から行った、顧客のショールーミングに対する施策が成功を収めたことで注目されました。2013年には多くの企業でオムニチャネル化が推進され、言葉も浸透してきました。

※ショールーミング:顧客が店舗で商品を見てから、ECサイト等で購入をすること

企業のオムニチャネル化も一段落したことで、オムニチャネル化した後の店舗はどうあるべきかという課題が出てきました。顧客もオムニチャネルの環境に慣れたことで、店舗に求めるものが変化しているように感じます。
今回は、オムニチャネルについての現状や事例の整理も含め、オムニチャネル時代の「店舗」のあるべき姿を考察します。

複雑化する、顧客と店舗の関係

前述のように、小売業における消費者とのチャネル(接点)が、従来の店舗(オフライン)に加え、ECサイト(オンライン)の台頭により、オムニチャネル化してきている背景があります。

顧客の購買は、「店舗」と「顧客」のバイの関係から脱却し、多様化してきていると言えるでしょう。例として、

画像: ※D4DR作成

※D4DR作成

・店舗でのみ購買
・両方から購買する(オムニチャネル的購買)
・ECサイトで見て、気に入った商品を、店舗で確認してから購買
・ECサイトでのみ購買

上記のような購買行動が見られ、複雑化してきていることが分かります。

伸び続ける、EC化率

2017年のEC化率は5.79%となっており、市場は16.5兆円に拡大していて、前年比9.1%の伸び率を見せています。

この数字の伸びには、スマートフォンの普及が大きく影響していると考えられます。

画像: 出典元:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC市場規模が16.5兆円に成長。国内CtoC-EC市場も拡大~(経済産業省) www.meti.go.jp

出典元:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました~国内BtoC-EC市場規模が16.5兆円に成長。国内CtoC-EC市場も拡大~(経済産業省)

www.meti.go.jp
画像: 出典元:スマートフォン等の急速な普及と端末市場の変化(総務省) www.soumu.go.jp

出典元:スマートフォン等の急速な普及と端末市場の変化(総務省)

www.soumu.go.jp

上がEC化率と売上金額の推移です。2011年から2017年にかけてEC化率、売上金額ともに倍のスコアに伸びています。

下がスマートフォンの普及率です。2015年にスマートフォンの普及率がフィーチャーフォンを上回り、2011年から2016年の5年で普及率が倍になっています。

二つの数字には連動性が見られ、今後もEC化率と売上金額は拡大していくと考えられます。

オムニチャネル化はなぜ必要なのか?

企業がオムニチャネル化に対応することで、店舗でもECでも買い物ができる環境が顧客に提供され、店舗とECの垣根が無くなってきています。

特にアパレル業界のEC化率は激しく、国内のEC市場全体と比較すると、ほぼ倍の11.7%となっています。

画像: 出典元:アパレルEC市場の動向と事業戦略の方向性(三井住友銀行) www.smbc.co.jp

出典元:アパレルEC市場の動向と事業戦略の方向性(三井住友銀行)

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以前Next Retail Laboの記事でご紹介した、元ベイクルーズの村田昭彦氏によると、店舗とECを行き来する「オムニチャネル的購買」をする層の購買の伸びは著しく、店舗だけを利用している層の3倍、ECだけを利用している層の1.7倍も購買金額が多いそうです。

このオムニチャネル的購買をする層が売り上げに貢献をしていることが分かり、店舗販売型のサービスを展開する企業は、ECサイトを活用し、スムーズなオムニチャネル化への対応が急務となっています(オフライン⇒オンライン)

逆に、EC販売型の企業については、顧客のリアル空間に進出し始めています。(オンライン⇒オフライン)

ここで、いくつか企業のオムニチャネル化事例を見てみましょう。

Amazon

Amazonは世界一のEC企業であり、日本でも売上NO.1のECサイトです。Amazonは店舗を持たないため、顧客とのリアルな接点はこれまでありませんでした。

そこで顧客のリアル空間に入り込むために、次のプロダクトを発表しています。

◆「Amazon dushボタン」

画像: 出典元:Amazon Dash Button(Amazon.co.jp) www.amazon.co.jp

出典元:Amazon Dash Button(Amazon.co.jp)

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ボタンが備え付けられた、小さなIoTツールです(一見そうは見えませんが)。

ボタンを押すと、WiFiを経由して、事前に設定している商品をアマゾンに注文ができるというもの。裏に磁石と粘着テープがついているため、顧客は好きなところに貼り付けておくことができます(台所の洗剤であれば冷蔵庫に、トイレットペーパーであればトイレに、など)。

顧客のメリットは、スマホを見ずに簡単に注文ができる点です。また、最短で当日中に荷物を受け取れるため、すぐに手にしたい商品であっても、店舗に買いに走る必要がなくなります。

◆「Amazon Echo & Alexa」

画像: 出典元:Echo & Alexa(Amazon.co.jp) www.amazon.co.jp

出典元:Echo & Alexa(Amazon.co.jp)

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AIを組み込んだ、マイク・スピーカーデバイスです。
話しかけるといろいろな質問に答えてくれたり、音楽の再生、ニュースやスポーツ、天気予報の情報を音声で提供してくれます。家電とつなぐことで、電源のON/OFFを話しかけることで行えます。
こちらもダッシュボタンと同じく、アマゾンへの注文が可能です。

Echo&Alexaの特異な点は、人口知能という点です。消費者と会話をするたびに特徴を捉えて、学習をしていきます。それにより、対応はより正確・迅速になっていきます。

顧客の購買履歴以外の嗜好・生活習慣等の情報を得ることで、より高度なリコメンドを行えるようになるでしょう。このようなデバイスをリアル空間に置くことで、顧客とECの間にある垣根を低くする目的があります。

◆Amazon GO

画像1: 出典元:Amazon Go cashierless convenience store opens to the public in Seattle(The Seattle Times) www.seattletimes.com

出典元:Amazon Go cashierless convenience store opens to the public in Seattle(The Seattle Times)

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アマゾン会員が入店できる、無人コンビニです。

ゲートでQRコードをかざして入場し、自分の欲しい商品を手にとると、同時にその商品がスマートフォンに表示されます。後はお店を出るだけで会計が自動的に行われるため、レジに並ぶ必要がない、というものです。

店舗内に複数台設置されているカメラとマイク、棚に設置されたセンサーにより、人の動きをトラッキングします。それにより、顧客の買った商品を正確に把握できるとしています。

画像2: 出典元:Amazon Go cashierless convenience store opens to the public in Seattle(The Seattle Times) www.seattletimes.com

出典元:Amazon Go cashierless convenience store opens to the public in Seattle(The Seattle Times)

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まだシアトルに1店舗運用しているのみですが、今後もこのような店舗が他所にも展開されていくでしょう。

AmazonはEC専売のビジネスモデルから脱却し、AmazonGoのようなハイテク実店舗を展開したり、Dashボタンやアレクサのように、生活空間に設置して、顧客とのエンゲージメントを高める戦略をとっています。

スタート・トゥデイ

スタート・トゥデイはアパレル通販「ZOZOTOWN」を運営しています。不振にあえぐアパレル業界において、いまだに急成長を続ける企業であり、ファッションメディアである「WEAR」の運営も行っています。

またプライベートブランドである「ZOZO」をリリースし、アパレルの生産も開始しました。ECサイト運営の枠にとらわれることなく、挑戦的なサービスを展開しています。

◆ZOZOSUIT

画像1: 出典:ZOZOSUIT(ZOZOTOWN公式) zozo.jp

出典:ZOZOSUIT(ZOZOTOWN公式)

zozo.jp
画像2: 出典:ZOZOSUIT(ZOZOTOWN公式) zozo.jp

出典:ZOZOSUIT(ZOZOTOWN公式)

zozo.jp

体型計測のデバイスで、顧客自身のスマートフォンと無償で配布されるタイツを使い、自宅で簡単に体型を計測できるというものです。

得られた体型データから、最適なサイズの商品を顧客にリコメンドできる利点があります。

また、プライベートブランド「ZOZO」のTシャツ、ボトムスなどの商品を、自分に合ったパターンオーダーで手にすることができます(アイテムによるが、数千パターンのサイズ幅を用意しているそうです)。ビジネススーツの展開を開始し、さらに細かいオーダーも対応可能となり、今秋にはニットも展開していくと発表されています。

今まで店舗でしかできなかった「計測」という作業を、安価なタイツと顧客のスマートフォンを使って実現するという点が、革新的だと言えるでしょう。

サイズが合わないかもしれないから不安、というファッションECの最重要課題を解決し、店舗との間にあるディスアドバンテージを打破しました。

良品計画

「無印良品」を展開し、商品カテゴリはアパレル・日用品・家具・食品など幅広い企業です。

アジアを中心に海外展開も積極的に行っており、強いブランド力で憧れのライフスタイルを提供しています。店舗のVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)にこだわりが感じられる企業の一つです。
※VMD:視覚に訴えながら顧客の購買を喚起する、ディスプレイによるマーケティング手法

◆MUJIPASSPORT

画像: 出典元:	MUJI passport(Google Play) play.google.com

出典元: MUJI passport(Google Play)

play.google.com

全国の無印良品店舗やECサイトでの買い物、店舗への来店で貯まる「MUJIマイル」、商品の店頭在庫を確認できる機能を有しています。店頭在庫はリアルタイムに連動しており、欲しい商品をどこで買うか、顧客は選ぶことができます。

このアプリにより、オフライン(店舗)とオンライン(ECサイト)の区別なく、無印良品の店舗とECサイトを顧客に回遊してもらえるようになりました。

アプリからはコラムや商品の紹介、ライフスタイル提案等質の高い情報が発信され、顧客に来店を促す機能になっています。

無印のようなVMDに非常に力を入れていて、来店によりブランド価値を高めるビジネスモデルにとって、MUJIPASSPORTアプリで店舗とECサイトの共存を図れたことは、成功したオムニチャネルの事例と言えるでしょう。

店舗の役割は「体験価値」を提供すること

これらの事例から考えられることは、店舗の役割は「商品を買ってもらうこと」にとどまらないということです。

「商品を買ってもらうこと」よりも、

・実際に商品を手に取ってもらう
・雰囲気を味わってもらい、満足してもらう
・ブランド体験をして、よりブランドを好きになってもらう

上記の役割の方が、重要となってきます。

店舗の役割が「商品を買ってもらうこと」から「ブランド体験をしてもらうこと」にシフトすることで、店舗スタッフの目標は「前年売上を超える」「地域NO.1売上を取る」といった、金額ベースの目標ではなくなるでしょう。

店舗でブランド体験をして、店舗とECサイトでシームレスに購入できる仕組みを用意すれば、店舗は今のように在庫をたくさん抱える必要がなくなります。
必然的に広いバックヤードや店舗面積は必要なくなり、最小限のスペースで、いかに上質なブランド体験をしてもらうか、が重要となってきます。

このように、ハード面では店舗はより縮小化していくことが予想されます。
次回のブログでは、「スタッフの役割がどう変わるか」「具体的な体験価値の仮説」などお伝えします。

執筆:D4DRアナリスト 吉田

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