小売業を取り巻く環境の急激な変化により、企業は変革を求められています。リアルからネットへ、ブラウザからスマホへ…など、顧客の買い物の接点が多様化していく中、どう顧客に寄り添ってマーケティングしていくのか、悩んでいる企業も多いでしょう。

今回は逸見光次郎さんをお迎えし、どのようにして顧客満足を高めて、買い物を楽しんでもらうのか。日本企業が解決すべき課題をお話いただきました。逸見さんは小売業界で多くの経験を持つ、オムニチャネルコンサルティング・経営コンサルティングのスペシャリストです。

逸見さんを迎えて行った、D4DR社内での事例研究の記事はこちらからご確認ください。

顧客ドリブンのマーケティング思考による事業再生コンサルティング:逸見光次郎氏を迎えて

画像: 【インタビュー】オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎氏 業務フローの「見える化」で現場の課題を解決し、顧客も「見える化」へ

コンサルティングとはどうあるべきか?

藤元)逸見さんが出版された本に記載がありましたが、KPIを業務フローと併せて考えるという視点のコンサルティングは、特に分かりやすく感じました。

また、コンサルタントが資料や報告書を作るより、クライアントに自ら担当してもらえるよう、コンサルタントが支援する方が、結果として効果が高い、というお考えでしたね。

逸見)はい。業務フローとKPIは、必ずクライアントに作って頂くようにしています。

その上で、課題管理表を常にアップデートし、業務フローとKPIの読み合わせをしっかり時間をかけてやることが大事だと思っています。誰がいつまでに、何をやるか、という確認は省いてはいけません。

画像: コンサルティングとはどうあるべきか?

逸見光次郎:1994年三省堂書店入社。99年ソフトバンク入社 イーショッピングブックス(現セブンネットショッピング)立ち上げ参画。2006年アマゾンジャパン入社 ブックスMD。2007年イオン ネットスーパー立ち上げ参画後、全社ネット戦略担当。2011年キタムラ入社 執行役員EC事業部長、オムニチャネル推進担当。2017年 ローソン入社 マーケティング本部 部長補佐を経て、現在はフリーで活動をしている

斉藤)コンサルタントは常にクライアントの社内に居るという訳ではないと思いますが、どのような手段でクライアントと会話すればよいでしょうか?また、コンサルタントの考えをどのように理解をしてもらうのでしょうか?

逸見)最初はできるだけ常駐して、クライアントに心を開いてもらうように工夫しています。

その際も私は作業に関しては極力請け負いません。知っているノウハウを伝えるので、クライアント側のメンバーに考えて手を動かしてもらい、その後に私も確認します。

藤元)逸見さんの手法は、戦略コンサル的な意味合いも強いですね。事業再生コンサルに関しては、抜本的に会社を変えなくてはいけません。懐に入って、新たな切り口でクライアントに伝えていかないと、と改めて感じました。

逸見)みんなで変えていくんだ、という意識が大切ですよね。

外部の力としてできること

藤元)ある程度大きい会社だと、役員とトップの意思決定が折り合わない場合があると思いますが、そういう場面に遭遇した時はどうしていますか?

逸見)会社を悪くしようとしている人はいない。折り合わないのは、今までの経験や観念の違いだと思っています。

藤元)コンサルは意思決定には参入できないですよね。どうしていますか?

逸見)意思決定はできないですが、お互いに議論をしてもらうよう投げかけることはできる。スタンスが違うだけで論点は近いという話を振れば、当事者同士が話すようになります。

経営に近しい人は頭の切れる人が多いので、意思決定において、議論で寄り添う余地はある。そのきっかけを作ってあげることが大事だと思っています。

藤元)隣の部署が何を言ってましたか?なんて聞かれる場合もあるくらい、部署をまたいだ横同士の話をしていない企業も多いですね。

逸見)同感です。だからこそ、新規事業の際などは、横同士で協力するチャンスです。

事業に巻き込んで丁寧に説明をすると、異なる部署間で一緒に仕事をするようになります。それによって他部署の業務フローが分かり、普段の業務の前と後の工程が分かってくるので、効率が良くなってきます。

先ほど、「私はノウハウを提示するだけ」と言いましたが、この場合も答えは言わないようにしています。答えの切り口を提示する、という感じですね。

藤元)当人が見て見ぬふりをしているところを、教えてあげるのもコンサルタントの大事な仕事ですよね。

画像: 外部の力としてできること

藤元 健太郎:1991年電気通信大学情報数理工学科卒業後、野村総合研究所入社。1999年5月、株式会社フロントライン・ドット・ジェーピー代表取締役就任。 2002年6月、D4DR(ディー・フォー・ディー・アール)株式会社代表取締役に就任。日経MJ「奔流eビジネス」連載中。

逸見)問題の捉え方が分かってくると、現場のほうが本質を理解しているので、解決方法がどんどん出てくる。組み立ての整理だけを手伝ってあげると、うまくいくようになります。

顧客の声を取り入れたマーケティングはどうあるべきか

斉藤)逸見さんはリテールの経験が大変豊富でいらっしゃいますので、常に顧客を意識されていることが伝わってきます。最近は、物づくりの世界でもユーザーエクスペリエンスを重視するのが当たり前になり、ファンを増やしていきたいという想いが強くなっていますね。ただ、寄り添おうとしてもうまくいかないメーカーも多いですが、なにか違いはあるでしょうか?

逸見)例えば、あるメーカーの扇風機は、顧客の困り事に寄り添ったメッセージを発信しています。言っていることはテクノロジーの話だが、「唯一羽のない扇風機」と宣伝すると、顧客は「子供が怪我をしないわ」と発想します。

一般の顧客は「DCモーター」とか技術やスペックのことを言われても理解できない。顧客との距離の縮め方に工夫が必要です。

顧客に寄り添った商品情報を伝えることが大事。この機能で、具体的にこういうことができます、ということが伝わると、商品の価格は関係なしに欲しくなります。

斉藤)日本のメーカーは、技術力が高い反面、マーケティングでシェアを失ってしまったと言われています。もちろん何もしていなかった訳ではありませんが、マーケティングに失敗したという思いから足踏みしてしまう、という声も聞きます。

逸見)顧客の声を聞いて商品を作ったのに売れず、マーケティングが失敗したみたいな判断をしている企業もあるが、それは間違いです。顧客の声の聞き方を間違えていたということで、マーケティングが失敗したのではないということです。

斉藤)顧客の声を取り入れた動きを、細かくやっていきたいとメーカーは思っていますよね。

画像: 顧客の声を取り入れたマーケティングはどうあるべきか

斉藤隆史:D4DR 副社長。野村総合研究所を経て現職。2002年のD4DR創業メンバーであり、藤元と共にクライアントサービス全般を担っている。趣味はスペシャルティコーヒーを楽しむこと。

逸見)例えば掃除機であれば、技術者含め皆で実際にユーザーの家庭まで掃除に行ったらいいと思う。

そこで吸引力やコードに長さがこれくらいあればというのが分かり、こういう経験の中でこう改良しました、と語れるようになる。

スペックの話は後にして、どう使うのかを先に伝えることが大事だと思います。

考え方としては、「6畳の部屋を掃除するためにつくられた掃除機」とかですね。「ヘッドが小さくて狭い隙間に入れる」とか、「狭い部屋でも収納しやすい」とか。そういう商品を顧客は求めています。

メーカーはスペックで話をしがちですが、商品力が大事です。商品力というのは、顧客の悩みを解消することや商品の楽しさも含まれていると思っています。商品を買うというのは、一生懸命稼いだお金を消費する、楽しみのフェーズであるということを忘れてはいけません。顧客は安いから買うだろう、という発想は危険です。

社会とマーケティングの変化

藤元)逸見さんも私もECやオムニチャネルに関わるようになって長いですが、振り返ると90年代に急激なネット化が進んで、マーケティングに大きな変革がありましたね。

私はソフマップさんが最初に作られたECサイトの構築をお手伝いしたのですが、20万円のPCが売れたときは大変驚きました。今では当たり前になりましたが、インターネットでPCのような高額商品が本当に売れるんだと。

逸見)流通も、地方で買いたい物が買えなかったりと偏りが見られますからね。

私のいた出版業界も、アマゾンの影響でネット化が急激に進み、書店はお客さんを取られています。

しかし、本に関してはデータベース化がかなり進んでいるので、ネットで書籍の予約ができるようになったというメリットがあります。それによって、中小の出版社は助かっているところも多い、という側面もあります。

藤元)本屋は絶対に必要だけど、なかなか厳しい時代にはなりましたね。むしろカウンターで読みたい本を相談できる本屋など、いいですよね。

逸見)その形式であれば、本屋に在庫がなくても良くなりますね。ネットのデメリットは、その本の横にある関連書が見られないこと。本屋では、陳列に大変気を遣っていて、この著者の横にはこの人の本を、というルールまであるくらいなのです。

日本企業へのメッセージ

藤元)最後に、今悩んでいる日本企業が何をすべきか、現場担当がすべきことなど、メッセージはありますか?

逸見)経営者は、何か改善しよう、何か変わらなければ、と危機感を持っている。そこでしなければならないことは、顧客視点で市場を見るということ。

現場の問題を課題へ昇華させ、自分たちで対処すべきです。

見やすい業務フローやKPIツリーを作成し、たくさんの人が見ても分かるように、「見える化」していかなければなりません。

藤元)商品開発はもちろん、顧客視点に立たなければいけません。

ただ、バイヤーなどは「俺の目利きだから、信じろ!」みたいな考えを持った人もいる。そういう人に顧客視点を本当の意味で理解してもらうにはどうしたらいいでしょうか?

逸見)現場の話と購買結果、購買前データ流入などを見て、定点観測で現場とデータを見てもらうことですね。

今は時代が変化している。高齢化、世帯収入の減少、インバウンドの増加など、需要がどうなっているのか非常に把握しにくい時代です。

毎回特殊な視点で見るのではなく、変化を見ていくことが大切になると考えます。

藤元)ありがとうございました。

画像: 日本企業へのメッセージ

オムニチャネルコンサルティング・経営コンサルティングのスペシャリストである、逸見光次郎さんとの対談をお届けしました。

逸見さんの「気づかせる」スタイルは、真にクライアントへ寄り添った、有意義で効果の高いコンサルティングであると感じます。マーケティングがうまくいかない企業は、そのやり方を知らないだけなので、ノウハウを伝えていきたいという逸見さんの熱い思いの詰まった対談だったように思います。

企業が課題を理解して変わっていけば、中で働く社員も楽しくなる。社員が楽しくなれば顧客も楽しんでお買い物ができる、という好循環社会が実現できればと思います。

私は前職でメーカー勤務をしていましたが、顧客目線に立った商品開発ができていないと感じることが多かったので、今回のお話は納得できる点が非常に多かったです。

社会とマーケティングが変化する中、「顧客の見える化と業務の見える化」は今後企業が生き残っていくために必須となります。

D4DRでは、今日本企業に求められている新しい課題を解決する方法論を、これからも探索していきます。

(聞き手:D4DR 藤元、斉藤)

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