2017年6月22日、D4DRが企画・運営に関わる「Next Retail Lab」フォーラムの第5回が開催されました。

今回の登壇者は、消費者視点のマーケティングコンサルタント、村山らむねさんです。「炎上動画」について、歴代炎上事例をみながら、なぜそれが繰り返されるのか、なぜ女性は真剣に怒るのかについて解説いただきました。

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動画が炎上する企業は、当事者意識を持っていないのです。

過去にさまざまな企業が炎上しているにもかかわらず、繰り返してしまう。なぜ炎上した企業から学ばないのか。自分の会社の事象でないと思っており、そういった周囲の出来事に関心を持っていない人がコンテンツを作り、承認しているのです。

炎上は、ターゲットを怒らせているのではありません。傷つけているのです。

画像1: 心を刺さず、背中をさする表現を ~炎上動画を考える~
第5回Next Retail Labフォーラム:村山らむね氏 講演

炎上は問題なのか?

企業によっては「炎上マーケ」として裏で喜んでいるケースも少なくありません。ページビューが稼げるからです。あるメディアでは、驚くような「釣り」タイトルを私の連載につけてくることがあります。予想どおり炎上します。本文を読めばタイトルのような内容でないことは分かるのですが、非難されるのはメディアではなく、著者の私です。

炎上で注目を集めた代表的な広告クリエイティブをみていきましょう。

1.2015年3月 「ルミネ」動画では、男性上司が若い後輩の女の子をほめ、主人公である女性が気後れしていると「需要が違う」とコメントします。
2.2016年10月 資生堂「インテグレート」のCMでは、25歳の女の子の誕生会で、友人たちが「今日からあんたは女の子じゃない」「ちやほやされない」と伝えます。
3.2017年4月 イオンは、「母を女にしてやろう!!」というポスターを掲示しました。
4.2017年5月 ちふれは「女磨き」サイトで《仕事、家事、育児……。いつの間にか「女磨き」をおろそかにしていませんか?》とメッセージを投げかけます。
5.2017年5月 ユニ・チャーム「ムーニー」のCMでは、ワンオペ育児の映像を流した後「その時間がいつか宝物になる」とメッセージが流れます。
6.2017年6月 VOCEは「ブスな22歳/普通の27歳/美人の32歳、付き合うなら?」というコラムをWebに掲載します。女性は年齢が上がるほど市場価値が下がると書かれています。

自分が広告部長である場合、これらのクリエイティブを止められるでしょうか。

私も通してしまうものはありますが、ユニ・チャームのCMはあり得ないですね。傍観者の立場から、子育ての大変な時期が「いつか宝物になる」と言われても腹が立つだけです。ネットでの反響は「吐き気がする」というものでした。当事者である女性たちが、あまりにリアルな状況を見せられて「いまさら何が応援なの?」と傷ついているのです。

誰も傷つけないクリエイティブはないのですが、一番のターゲットを傷つけてはいけないのです。

「リアルな日常を描き、応援したい」というのは危険な考え方です。「応援」という名の呪縛に関する嫌悪感と、「応援」だからという正当化に嫌悪感を覚えるのです。

なぜ繰り返すのか

炎上するクリエイティブが繰り返し作られる理由の一つ目は、「オヤジの罠」です。「25歳から市場価値が落ちるのは事実でしょう。それを言って何が悪い?」という前時代的な価値観を押しつけます。炎上したら、とりあえず謝罪しておけばよいと考え、他社事例に学びません。うるさい女が何か言っているととらえているので、根本的な解決にならないのです。

二つ目は、「Webの罠」です。クリックしたくなるような表現で煽り、「劣等感」を刺激します。Web上のクリエイティブは消費者が怒りやすく、SNSで拡散します。削除したとしても、ずっと残ります。“魚拓”(ウェブアーカイブ)がとられ、保存されているからです。

三つ目には、「味方の罠」があります。消費者は、自分が購入する商品が味方だと思っています。味方が予想に反したことをするとびっくりするし、否定されると落胆します。ちふれさんの炎上は、「女磨き? え、全部がんばれってあなたが言うの?」と消費者が驚いたのです。

四つ目は、「同族の罠」です。女性こそ、女性が見えなくなっているのではないでしょうか。クリエイティブの現場には女性もいたはずです。なぜ、炎上動画を止められなかったのか。

共感をどうつくればよいのか

自己評価と他者評価という軸を考えた時に、両方が高い人を「キラキラ女子」としましょう。キラキラ女子のいる一流企業の人や、女性社員が多い企業ほど、気をつけないといけません。

世の中の大半は両方が低い人です。ここに当てはまる女性は、日々揺らいでいます。他人の評価を気にせず自分の評価を高くしたいと、けなげに努力しています。

そういう女性に共感を得る、おすすめのCMはどのようなものでしょうか。西島秀俊が出ているパナソニックの冷蔵庫のCMはいいですね。家事は女性がやるものという観念がない。早く帰ってきたほうがご飯をつくっています。

二つ目のおすすめはメナード「ビューネ」のCMです。背の高い年下の男性に擬人化したビューネくんが、疲れ果てたOLの肌をほめてくれます。現状を肯定し、当事者の視点で改善提案してくれます。これであれば応援してくれると受け取れます。

一方、資生堂「インテグレート」は、このままじゃまずい、だから化粧品買いなさい、と言います。脅迫に聞こえます。

企業は「脅迫」と「応援」の違いを認識して、ブランドコミュニケーションを築いていかなければなりません。これはCMやWeb動画だけでなく、採用、福利厚生、女性活動推進の場でも、同じことが言えるでしょう。

企業側は、「売上が落ちなければ何をしてもいい」という考え方をせず、ターゲットを無駄に傷つけないことを意識したほうがよい。

そのためには、いちばん身近なエイリアンである異性、妻や娘、もしくは夫と会話をすることです。そのコミュニケーションをとることが大切なのです。

女性は「働け、産め」と、要求されることが多すぎます。その要望をさらに重くするようなコミュニケーションではなく、少しでも軽くしてくれるようなコミュニケーションをとる。そのままでいいよ、これ以上がんばらなくていいよ、というメッセージでないと伝わりません。「もっとがんばれ」では、拒否反応を示されてしまいます。

心に刺さる表現よりも背中をさする表現、「ありのままでいいよ」というメッセージしか、今は届かないのです。

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終了後の質疑では司会であるD4DR・藤元健太郎が、メディアでマツコ・デラックスのようなおねえキャラが増えている背景は、彼女(彼)たちに言われると許せてしまうという背景があるだろう、と指摘。フェローからも「クリエイティブも、自分ごとすぎると炎上するけれども、auの三太郎のように荒唐無稽すぎると誰も傷つかない」という意見が出ました。
また「洗剤のCMに登場するのが男性になってきており、科学的に立証されたものを納得して購入するという流れになっている。家事は女性がするものという世界観から抜け出している」という状況を、らむねさんが紹介しました。

ソーシャル上では、理論は広がらないけれども、感情は広がる。特に男性より女性のほうが傷つきやすく、その炎は女性全体に広がってしまいます。それを防ぐためにも、らむねさんは対話の重要性を強調しました。

「炎上は意図的に仕掛けてはいけない。企業も消費者も勉強していくべきだ」と、参加しているフェローの意見は一致しました。

画像: 共感をどうつくればよいのか

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