社会ソリューション事業の強化に向け、NECは6月、「デザインセンター」を設立した。若手社員やデザイナーを起用した新たな取り組みの中で「アクセラレーター」として活躍するNEC事業イノベーション戦略本部ビジネスモデルイノベーション室 目黒友佳氏にお話をうかがった。

画像: NEC目黒友佳(前編):売れない商品開発からの脱却をめざしてチャレンジを続ける若手アクセラレーター 〜若手ナレッジワーカーの肖像

新たな空間、新たな部署で開発手法を再構築 

「写真撮影もあるということだったので、まずは最上階へご案内しますね。今、社内でも人気のスペースで、予約が結構いっぱいなんです」

と目黒が紹介したのは、港区三田のNEC本社の最上階に位置する「共創スペース」だった。巨大な窓からは都内を一望でき、白と青と赤などコントラストのある色調でデザインされた空間となっている。ここで、ビジネスデザイナーや目黒達アクセラレーターが中心となり、顧客の課題について考えるワークショップが開かれるのだという。

NECは2014年12月、新たな製品・サービスの開発スタイルを構築していく方向性のひとつとして、「共創スペース」を発表。翌年6月には「ビジネスイノベーション統括ユニット」内に「デザインセンター」を設立し、全社注力事業の牽引やビジネスモデル変革をすすめている。NECの若手社員やデザイナーを積極的に取り入れ、「売れない商品開発」からの脱却をはかろうとしているのだ。

目黒は、このビジネスイノベーション統括ユニットのメンバーのひとり。入社7年目でNECが会社的にサポートするプロジェクトに参加することになった。ここでの目黒の役割は「アクセラレーター」。全社で進めるプロジェクトに参加し、メンバーとして加速支援していくのである。客観的な視点を持ち、プロセスの構築や顧客ニーズの見極めなどを徹底的に行っているのだという。

華奢な印象に反して、目黒の行動量は並外れて大きい。とにかく積極的に外へ出ていく。介護施設や空港でのユーザ観察、大学生や主婦を集めたグループインタビュー、営業のネットワークを活用した企業インタビューなどを自ら企画し、足を運び、耳を傾ける。そして、就業時間後もさらに外へ出ていく。

持ち前の行動力とコミュニケーション力で自然に数十人規模の食事会の幹事までこなす上、その前に少しでも時間があけば、それを生かして0次会のアポまで入れてしまう。それらを、力まずに流れるように見事に進めているのだ。様々な機会をとらえて、重層的に情報を自分のものにしているといってもいい。

画像: 新たな空間、新たな部署で開発手法を再構築

創造を生むのは経験の積み重ね

そんな目黒の行動の基点は、「経験しないと創造できない」という自身の信念からきている。言葉だけの「ユーザ視点」ではなく、本当に求められているものを見つけるためには、様々な人に実際に出会うという経験を重ね、自分の中にペルソナを蓄積していくことが重要であり、それが現実に沿った社会課題の解決につながると考えているのだ。

「ユーザーに『お金を払ってまで欲しい』と思って頂ける製品開発には、今までと違う新しいアプローチが必要だと私たちは気付きました。今は、nice to haveで商品が売れる時代ではありません。強いwantsのある、あるいはmust haveの商品づくりが求められます。技術ありきで“使われない製品”を発売するのではなく、ユーザーをじっくりと観察し、自身でも気づいていないような本質的な困りごとを聞き出し、理解し、解決策を見つけていくまでの一連のプロセスが必要です。時には、『共創スペース』等を活用して、その過程をお客様と一緒に歩んでいくこともあります。まずは、ひとりのユーザー、ひとりのお客様を見つけ、困っていることをヒアリングすることから始まります。最初のひとりと出会うこと、それが社会課題の解決につながる製品やソリューションを開発していくための一歩です」

この取り組みの要となっているのは、NEC社内から結集された約50名のデザイナーたち。彼らはもともと、デザインするための過程としてユーザのニーズを深く探り、解決策としてのデザインを生み出す思考や表現プロセスを美術大学などでたたきこまれている。そんなデザイナーが中心となり、ワークショップの設計やファシリテートを行い、デザインやサービスの開発を進めていく。従来であれば広告代理店やデザイン会社が担っていた機能を社内で持つようになったのである。

「人と人、知識と知識、アイデアとアイデアが混ざり合うことで、よりユニークで完成度の高いアイデアが生まれていると感じます。また、そのアイデアが、デザイナーの手によってすぐにイラストやプロトタイプとして目に見えるカタチになっていく。これは、今までよりずっと創造的でスピード感がある動きだと感じます」

通常は新たな動きが生まれると、抵抗も生まれるが、営業担当者など社内での反応を聞くと、「受け入れてもらっていると感じる」という。従来、営業はエンドユーザと一緒に動いてきているため、顧客の生の声を一番知っている。だからこそ、ユーザ視点で企画や開発を進めることに抵抗を感じていないのではないかと目黒は分析する。

ただし、この取り組みの評価はこれからだ。現在いくつかプロジェクトが進行中で、プロセス変革の途中にある。このプロセスでつくられたサービスやプロダクトが世に出て初めて評価がくだされるのである。プロジェクトのメンバーは今、商品の開発はもちろん、100億円、1000億円規模の社会課題の解決も見すえて邁進している。

後編では、プロジェクトにおける若手社員の活躍や、目黒のネットワークづくりがこの新しい取り組みにどう生かされているかなどを具体的にうかがっていく。

(聞き手:ナレッジワーカーラボ 藤元健太郎、文:ナレッジワーカーラボ 小林利恵子)

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