一人ひとりが自覚的にプロフェッショナルとしての蓄積を作っていくことが重要となった今、企業の側にも人材を活かして伸びていくためにパラダイムチェンジが求められている。働く場は、これからどう変わっていくのか、変わっていくべきなのか?

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米倉誠一郎

― 前回、現場の生産ラインの能力が高まっていかなければ、新しい体制作りも難しくなっていくというお話が出ました。

これはプラットホーム作りの問題だと思うのです。中小企業の人間が関われるようなプラットホームを作ることが大事。つまり、強い中小企業がナレッジパートナーとして関われるような仕組みを考えるということです。

QC活動というのは、ワーカー自身がプロセスに関わることで生産性を上げ、そこに生きがいをも生産性を上げてきたという側面があります。そうした、より多くの人が参加できるプラットホームを作って、生産性だけでなくコミットメントが高まることが大事なのです。

例えば、僕は大学の教師ですから毎年、学園祭があるんですよ。僕には学生たちが毎年、毎年、同じことをしているように見えますが、学生たちにとっては一生に一回のこと。彼らは命をかけて、その瞬間にコミットしている。だから生き生きと働いているんです。

企業はワーカーに、そのようなコミットするものを与え続けなければならない。これから、そういう仕組みを作っていくと面白いと思います。

これからの競争力

― 多様な中小企業の職人などが参加できるプラットフォームが増えると、自らのプロフェッショナリズムが明確であればあるほど役割が見えて参加しやすくなります。そこで職人の暗黙知が形式知として出てくると、日本の中小企業が強くなれるし希望がもてる気がします。一方、万能型の人材育成を目指すローテーションの中にいたホワイトカラーは、何をもってコミットするのでしょうか。

「競争力」とは何か、ということを考えざるを得ないえしょう。競争力というのは、「選ばれる力」なんです。

これまでは、競争力というのは相手を出し抜く力だとか、他の企業より強いモノを持っているといった事だったけれど、実はそうではないのです。顧客から「この企業は面白い」「この企業を選びたい」と思われて、選ばれる力。それが競争力。

ホワイトカラーの場合、トータルで「選ばれる力」を持つ必要がある。ところが、これまで日本はそういう人材を育ててきませんでした。本当の意味で選ばれる力を持った人間ではなくて、企業が選びやすい人間を作ってきてしまったのです。

今、必要なのは選ばれる人間としての、自らの力。これは企業ではなくて個々が自分の責任において自ら蓄積していくものです。

個人か、チームか

― ただ、日本では「そんな風に、個人がそれぞれ自分こそプロフェッショナルだと言い出したら会社はガタガタになってしまう」というのが、ありがちな反応でしょうね。

それに対しては、こう答えたい。
カルロス・ゴーンさんに、「あなたは、チームが大事だと言う一方で個人も大事だと言う。一体、どちらなんだ?」と聞いたことがあります。予想していた答えは、「両方大事」といった曖昧なもの。ところが、彼は明確に

「個人だよ」

と断言しました。強い個人を集めないと強いチームはできないんだ。でも強い個人が集まるとチームはバラバラになる。「だから、俺が必要なんじゃないか」と。

これは、僕にとって、ものすごい衝撃でした。

日本人は、一人ひとりが弱いからチームになって戦うんだ、チームになれば負けないぞというのがビジネスの場でも言われ続けて、皆そう思ってきたわけです。でも、これじゃワールドクラスでは戦えない。

サッカーだって、弱い奴が集まったチームと、強い奴ばかり集まったチームで戦ったら、やはり強い者たちが勝つでしょう(笑)。

だから、やはり一人ひとりが強くなれと言いたいです。ただし、それをまとめるプロフェッショナルとしてのマネジメントが必要だということ。
日本ではローテーションしてからマネジメントになるが、マネジメントとは本来、別のトラックとして学習すべきものなのかもしれない。

― プロフェッショナルとして対峙し、まとめ上げる力ということですね。

強い個人が集まると会社がバラバラになってしまうと言われるけれど、実は、個人主義になればなるほどチームが大事になってくるのです。

これは、ジョン・スチュアート・ミルの個人主義にも通じますが、「自分が一番大事」と思う個人主義者は、他の人も同様だと思う。したがって、個人主義は他者の存在を尊重するひとなのです。この前提でチームを作り上げていくのと、「滅私奉公、個人より全体が大事」という前提で作るチームは、違うのです。チームをどう作り上げるかという、このパラダイムチェンジが今、必要です。

プロフェッショナルを育てようとすれば、ギラギラと個性的な人間が集まってくる。なぜなら、個性を殺したプロフェッショナルなんてありえませんからね。

そんな彼ら一人ひとりがチームに貢献するようになるには、マネジメントの力が必要なのです。

― マネジメントを外から入れるという解決策も、一つにはありますよね。

そうですね。サッカーのアナロジーではないですが、優秀な監督が必ずしも優秀な選手ではなかった。したがって、時には社外から優秀なマネジャー引張ってきて、個々がチームの中で最も高いパフォーマンスを上げるにはどうすればよいか、ということを考える手段も十分にあるわけです。
こうした、外部マネジャーの登用もあちこちで、兆しがみられるようになったとは思います。

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これから持つべき競争力とは、選ばれる人材としての蓄積、つまり「選ばれる力」。次回は、今の学生の傾向などもまじえて、「就社」と「就職」についてお話をうかがう。

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米倉誠一郎

プロフィール

米倉誠一郎(よねくら・せいいちろう) 一橋大学 イノベーション研究センター 教授

1953年、東京生まれ。一橋大学社会学部、経済学部卒業。同大学大学院社会学研究科修士課程修了。ハーバード大学歴史学博士号取得(PhD.)。95年一橋大学商学部産業経営研究所教授、97年より同大学イノベーション研究センター教授。2012年〜2014年、プレトリア大学GIBS日本研究センター所長を兼務。また、Japan- Somaliland Ope University 学長のほか、六本木アカデミーヒルズの「日本元気塾」塾長を務める。『創発的破壊未来をつくるイノベーション』『脱カリスマ時代のリーダー論』『経営革命の構造』『2枚目の名刺 未来を変える働き方』など多数の著書がある。

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