20代から定年直後の50代までという幅広い世代の社員でスタートを切ったハンズラボ。その立ち上げから現在まで、どのような苦労があったのだろうか。そして、今後の展開は…?

初心者ばかりで開発をスタート

— ハンズラボがスタートした背景は、どのようなものでしたか?

人事や会計のシステムは、ある程度は既存のパッケージで対応可能でしたが、営業系のシステムはどんどん機能を変更する必要があったのです。自分たちで改善できればいいな、と思っていたら自社開発になってしまったというわけです。

— 開発スタッフは、どのように集めたのでしょうか?

最初は東急ハンズの店舗の人だけで構成しました。つまり初心者ばかりです。
今は中途採用者も採るようになったので、店舗出身者は半分くらいです。店舗の人は開発の経験がない人ばかりでしたので、コマンドラインから勉強しました。現在、社員は45名ほどです。

— やはり、若い人を中心に集めたのですか?

いえ、20代から50代後半までと年代は幅広いですよ。必須条件は「やる気」だけ。経験は問いませんでした。

実は、55歳で役職定年になった人が「第2の人生で挑戦したい」と手を挙げてくれました。プログラミングなど、とても覚えがいい。しかも、前の部下が今度は上司であり先生になるわけですが、何のためらいもなく「転職したつもりで頑張ります。教えてほしい」と言うんです。人間的に大きいなと思いましたね。こういう人は、仕事ができますね。

やる気があるのでスタッフの覚えが良いですし、教えるのも上手くなってきているようです。開発ペースが立ち上げ時より速くなっています。当初は試用版の制作に約3ヶ月、リリースは半年後でしたが、今では制作に2ヶ月、リリースは4ヶ月後です。

小売りに役立つクラウドサービスを開発したい

— 今後のハンズラボは、何を提供していくのですか。展望をお聞かせください。

ハンズラボは、もともと外販するためにつくった会社です。開発したサービスを東急ハンズの名前で販売していたら、小売りの東急ハンズにシステムを発注するのは違和感があると指摘されたのがきっかけです。東急ハンズ向けのシステムが一段落したら、本格的にハンズラボのサービスを外へ売っていこうと思います。今までありそうでなかったなというようなものをつくっていきたい。

— 小売り系に向けてということでしょうか?

はい。O2Oなどもサポートしていくことができます。
今、クラウドで安価なサービスが出てきています。経費精算システムのConcur(コンカー)や、会計クラウドのfreeeやmoney forwardなどです。もはやパッケージをドーンと売って大もうけする時代ではないので、安いクラウドのサービスを提供していきたいですね。
また、既存のポイントシステムやPOSシステムは飲食店向けのものが多いので、商品点数の多い小売りに対応できるサービスを開発し、提供していきたいです。
− その場合、何が売りになりそうですか?

余分な機能は「必要ない」とはっきり言えるSIerにしたいですね。
様々な仕様を要望してくる人は「1年に何回、使うの?」というような機能を入れてきますが、開発コストまで考えているのかと問いたい。言うなりじゃなくて本来は開発側がきちんと「無意味なので入れません」と言えればいいのです。それより、付加価値のあるところにIT投資を絞るほうがいいと考えます。
− ハンズラボのサービスにはどのような手応えがありますか?

いろいろ予想外のことも起こります。
東急ハンズで自社開発している時は、7割程度の仕上がりで利用開始し、動かしながら改善していく方法で成功しました。
ところが、同様の形でお客様にサービスを提供したら、満足度が低下したのです。東急ハンズの中であれば、仕様を追加するかどうか私がすぐに判断できましたが、お客様にも開発の余地を残し、欲しい機能を追加できる形で提供したところ、窓口の部署に要望が集中して対応しきれず満足度が下がったのです。

一方、最も満足度が高かったお客様は、柔軟性の低いサービスを提供した企業でした。

この場合「これはクラウドサービスです。仕様変更はできません。これでよければ、いかがですか」と伝えたのです。機能が追加できないので、要望はほとんどありません。できる機能を現場で見つけて、現場で課題を解決して回していくわけです。問合せが少ないので、ハンズラボの業務負担も少ない。たまにお客様の様子を知るために訪ねると「いやぁ、問題なく使っていますが何か…?」などと言われてしまうほどです。

− 手厚く対応して、逆に顧客満足度が低下したというのは興味深いですね。

慣れてしまえば、トランザクションの仕組みやツールは何でもいいということです。これからのIT投資は、マンマシンラーニングなど今まで人ができなかったところに投下したほうがいいと思います。

− 経営者にアプローチしての感触はいかがでしょうか?

基本的に、ご提案して断られたことは、まだありません。何かを変えること、新しいものを導入することに対して柔軟な経営者が多いと感じています。

* * *

何かを変えること、変化し続けることを恐れない「しなやかさ」と、目の前の仕事にチャレンジする「やる気」。移りゆく時代の流れの中でキャリアを積む上でも、ビジネスの可能性を広げる上でも、これらが大切な鍵となることを、長谷川氏のお話から学ぶことができた。

画像: 小売りに役立つクラウドサービスを開発したい

長谷川秀樹 プロフィール
株式会社東急ハンズ 執行役員 オムニチャネル推進部長、ハンズラボ株式会社 代表取締役社長
自己紹介:
1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。
2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、ツイッター、フェイスブック、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。
2011年、同社、執行役員に昇進。
2013年、ハンズラボ株式会社を立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任)

This article is a sponsored article by
''.