大手メーカーの社員が、ネット上でさんざん会社の悪口を言って辞めながら、「土下座してでも前職に戻りたい」と、転職を激しく後悔する内容をツイッターに投稿し、注目を集めたことは記憶に新しい。ある調査によると、転職者のうち、3人に1人は転職を後悔していると告白している。

コンサルタントの転職においてはどうだろうか?コンサルタントのキャリアを題材にし、華やかな成功にフォーカスしているものは、すでに数多く見聞きするが、当コラムでは、あえて転職にまつわる失敗に焦点を当てることにしたい。コンサルタントのキャリア形成における意思決定の参考になれば嬉しく思う。

なお、このコラムは現役コンサルタントに特化している。コンサルティング業界を目指しており、業界の内定獲得のためのノウハウを知りたい人には、今回はご期待に添えない内容といえそうだ。ここでそっとページを閉じていただきたい。

ヘッドハンターの甘言

活躍しているコンサルタントの多くに、ヘッドハンターから声がかかる。かなり魅力的な給与やポジションを提示してくるのだ。

ヘッドハンターは企業から依頼を受けて、特定ターゲットの候補者を依頼企業に移籍させることを最大のミッションとしている。個人指名で依頼がくる場合と、特定企業の部署名まで指名し、特定多数に向けてハンティングを依頼されるロングリスト形式があるのだが、これらをひと言でヘッドハンティングと呼ぶことが多い。最近では業界の好調を背景に、人手不足を解消するため、単に手足となって働くだけの「アームハンティング」も増えている。

<失敗事例>
鳴り物入りで転職しても、転職先で期待されたパフォーマンスが出ずに退職する例は意外と多い。未然にこの失敗を防ぐためには、入社後に期待されたバリューを出すためのスタッフや予算などのリソース、環境(上層部の後ろ盾)は得られるか?などの条件は、最低限確認しておく必要がある。

みんなで渡れば怖くないbulk移籍

「bulk(バルク)」とは、「一括・ひとまとめ」を意味する英語で、コンサルティング業界ではチームでの移籍を意味する。例えば、パートナークラスがたった一人で方法論も異なる環境に転職した場合、新天地のメンバーと共に、求められている通りのパフォーマンスを出すことは想像しにくい。このため、古巣で実績のあるチームを丸ごと引き連れて転職するのだ。転職後、すぐに高いパフォーマンスを期待できるからである。

bulk での移籍は、転職する者、受け入れ企業の双方にとってリスクが少ないと信じられているが、果たしてそうだろうか。

<失敗事例>
bulkで移籍したチームが1年後もそのまま残っていることの方が稀である。

誘われるままにチームで一緒に移籍したものの、メンバーの一人が方向性の違いから退職。するとあっという間に一枚岩が崩れ、二人目が抜け、ついには上司までが退職してしまい、チームが崩壊。自分自身も居場所がなくなり、退職する羽目になる。このような例は枚挙にいとまがない。

そのような事態にならないためには、「赤信号、皆で渡れば怖くない」という思考停止に陥ることなく、自分事として決断しなければいけない。移る前に、自分一人でも新しい職場に転職する意味と価値があるか熟考することが大切だ。

元上司からの誘い

では、転職した元上司から誘われた場合はどうだろうか。移籍してからすでに長い年月が経ち、しっかりと地盤を築いている人であればリスクは少ない。しかし、転職して間もない元上司が転職を熱心に誘ってくるケースは、前述のbulkの移籍と同様に注意が必要である。あなたを誘う上司は1年も経たないうちにいなくなっている可能性もある。やはり、一人称で決断する必要がある。

意思決定の責任を負う覚悟

これらの例で「ヘッドハンターや元上司には気を付けたほうがいい」と言いたいわけではない。過去の転職理由について問われた時、「ヘッドハンティングされたから」や「上司(あるいは元上司)に誘われたから」と他責にする人に限って、転職を繰り返す傾向がある。これは何を意味するのだろうか?

誘いはあくまでもきっかけに過ぎない。転職を決断するのは自分自身。そのことを、ここで改めて強調したいのである。

そう、覚悟無き転職では、困難や想定外の壁にぶつかった時に乗り越えるより先に、後悔の念が頭をもたげてくる。いかなる甘言で誘われたとしても実際に転職するのは自分自身なのだ。その意思決定によって得られる利益も不利益も、結局は自分自身が背負うことになる。したがって、自身が重要視する価値観、軸に沿って決断を下すことが重要になるのだ。これを肝に銘じておきたい。

画像: 意思決定の責任を負う覚悟

三石真司(みついししんじ) アクシスコンサルティング株式会社
自身の仕事に誇りを持ち、キャリアコンサルタントが天職だと涼しげに言い切る一児の父。九州男児の割にお酒はめっぽう弱く、週末はもっぱらノンアルコールジュースで妻と乾杯。

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