オムニチャネル時代に向けたバリューチェーンの再構築

ファーストリテイリングがアクセンチュアとの協業を発表した。これまでも事業会社がITベンダーやコンサル会社との協業を発表することもあったが,今回の柳井社長の意気込みには自社の経営資源だけではグローバルなオムニチャネル時代を戦えないという強い戦略を感じる。オムニチャネル戦略としてはすでに大和ハウスとの共同事業で物流を強化中だ。

オムニチャネル時代に顧客と企業の関係性はデジタルコミュニケーションが全ての中心になり,そのコミュニケーションをベースに組織や機能などのバリューチェーンは再構築される。その中で外部資源の方がより強く効率的であれば外部パートナーへのBPOや共同事業に置き換えられる。アマゾンやセブン&アイなどのプラットフォームに乗った方がよければ既存資源を捨ててプラットフォームに乗るという戦略を大企業が選ぶこともこれからは十分あるだろう。

ビジネスがわかるデジタル人材の争奪戦

世界トップクラスのよい商品を作り,販売する人材はファーストリテイリングにすでにたくさんいるだろう。それでも柳井社長が焦燥感を持っているのは顧客とダイレクトにコミュニケーションを行い,集まったデータを元に開発から生産,流通,顧客体験をさせて販売,フォローするデジタルコミュニケーションを基本としたバリューチェーンを再構築できる人材が社内にいないという危機感だからだろう。

長年ファーストリテイリングのシステム構築をしてきたアクセンチュアには少なくともそうした人材が自社よりはいる。世界的なデザイナーからすぐに引っ張ることができるかも知れないが,そうした高度なデジタル人材を社内で今から採用,育成することは無理という判断だろう。やはりセブン&アイのオムニチャネル戦略もITのトップ企業を集結させて進行している。今後こうした人材はますます争奪戦になることは間違い無い。

ITを理解したコンサル会社の新しい役割

アクセンチュアも各業態のトッププレーヤー企業には成功報酬型を提案するなど従来のリスクを追わない受託ビジネスからの脱却を模索している様子があった。今回の提携もリスクを追ってでもそれを上回るメリットが既存ビジネスにもあると考えているのだろう。何よりもコンサル会社の社員は近年は常駐型でPMOなどを行うことが多く,ガシガシ資料作りをさせられるなど一部では「高級人材派遣」と揶揄する向きもある。確かに費用は高いがあっという間にロジカルな資料を作成する力は重宝されている。しかし,コンサルの若手からするともっと事業の達成感を味わいたいというニーズも大きいだろう。こうしたプロジェクトに参画し,現場感をもった事業経験者を育成していくことができるため,アクセンチュア側のメリットも大きい。

かつて2000年頃,ITバブルの時代にもコンサルティング会社でネットベンチャーに対する同じような共同事業の試みはあったものの、当時は実ビジネスとしてのニーズは弱かった。現在のリーディングカンパニーのニーズには激烈な競争を勝ち抜くための強い意志がともなっている。ビジネスがわかるデジタル人材を短期間で育てる役割としてのIT部門を持つアクセンチュアのようなコンサルティング会社へのニーズはますます高まることだろう。転職で先方の担当責任者になったとしても強いネットワークができることに間違いはない。

残念ながら現在の日本の事業会社ではトップ企業でもビジネスがわかるデジタル人材を育てることは難しく,現在のスピード感では間に合わないということがわかるのが今回の協業発表なのだろう。

藤元健太郎 D4DR代表/ナレッジワーカーラボ主席研究員

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